イン・ザ・マーシュ

映画とドラマと女優さんと… 沼の中から備忘録

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷 sat. 2021.5.22.

 

 

 原作未読で見ました!

 公開当時によく本屋さんで流れていたトレイラーに惹かれて、ずっと見たかった映画。本を買いに行ったのに、映画を見たくなって帰ってくるという(笑)「貴女が世界を鳴らすのよ」この予告のセリフがずっと印象に残っていて。今日、やっと見ることができました!

 とにかく、映像と音楽が奇麗。オープニングから映像が良かった。あの光景を思い浮かべながらピアノを弾けたら本当に楽しいだろうな。何度も出てくるあの回想シーンは、亜夜ちゃんにとってお母さんとの大切な思い出なんだなぁと思いました。あとは、海に行くシーン。とても奇麗で、本当に音楽が聴こえてきそう。全体的にアングルが素敵でした。そして、ピアノの物語なだけあって曲も良い。トレイラーで流れていた曲は、亜矢ちゃんの本選の曲だったんですね。まだ、私の頭の中であの曲が鳴り響いています。

 ストーリーとしては、天才と秀才と凡人の話かなと思いました。天才は生まれた時から天才で、凡人がいくら努力しても彼らに追いつくことはできない。凡人である明石さんの一種の諦めと、だからこそ凡人の生活者としての自分にしか出せない音があるというプライド。彼が今後コンクールに出ることはないかもしれないけれど、趣味としてピアノは続けてほしいと思いました。最終的に努力賞?を貰えて良かった。明石さんは凡人だけど、生活者としての音楽は人の心を動かす力がある。審査員もそう思ったのではないかな。私は、明石さんの「あめゆじゅとてちてけんじゃ」が好きです。奥さんや息子さんへの愛が詰まっている気がして。亜夜ちゃんや風間君の演奏を聴いて、負けを悟った時の表情が切なかったです。

 天才は、亜夜ちゃんと風間くん。過去を乗り越えて、本選を終えた時の亜夜ちゃんの笑顔が良かった。きっとお母さんも喜んでいるはず。風間くんは、本当に「ギフト」そのものですよね。亜夜ちゃんと、マー君。そして、審査員や観客へのホフマン先生からの最後の贈り物。亜夜ちゃんが本選を終えた後、クローズアップされた麦わら帽子がソファから消える描写が良かった。このシーンで「ギフト」であることが強調された気がします。神様からのギフトは、颯爽と消えていくのが一番似合う。言語化するのは難しいけれど、このシーンが一番好きです。亜夜ちゃんの音に出会った彼はきっと、これからもピアノを愛し続けていくのでしょう。二人の連弾も楽しそうでとても良かった。天才同士だからこそ、分かり合える気がして。

 マー君は、秀才かな。ピアノの腕は超一流だしコンクールで優勝したけれど、天才ではない気がします。幼少期に亜夜ちゃんとお母さんのピアノに出会い、その音を求めて努力し続けてきた人。亜夜ちゃんと風間君は純粋にピアノが楽しい、好きという思いで弾いている気がするけれど、マー君には野心もある。それが二人とは違うところかな。その野心がマー君をここまで強くしたと思います。

 細かいところに触れると、亜夜ちゃんの衣装が可愛かった。ドレスも1次、2次と上がっていくにつれて豪華になっていくし、私服もかわいい。赤や青の原色が多いけれど、派手過ぎずに自分を持っているという意味で、彼女らしさを表していると思う。あとは、ブルゾンちえみさんに驚きました。エンドロールで、どこに出ていたっけと考えちゃったくらい。セリフはないけれど、片桐はいりさんの存在感も良かったです。

 映画を見て、ピアノを弾きたくなってきました。ステージへの通路や、待ち時間の手袋。ステージ上から見る観客席など、私まで緊張しちゃった。もう一回味わいたいと思うけど、同じくらい怖さもあって。あの独特の空気を上手く表現できていたと思います。

 ストーリーとしては、少し薄かった印象です。2時間に収めるなら、あれで限界だった気もするけれど。予告の印象からすると、少し盛り上がりに欠けるような気がしました。けれど音楽も良かったし、何より映像が奇麗だった。映画館で観たら迫力が凄かっただろうな。次は原作も読みたいです。